第4話 ほったらかし温泉 こっちの湯 袖振りあうも多生の縁
こっちの湯
夜明け前に開場し、眼下の甲府盆地を広く見渡せる あっちの湯。
朝日を見るなら あっちの湯なのですが、こじんまりとした こっちの湯が好きなので、こっちの湯に入りました。
洗い場
内湯と露天に6ヶ所づつ。露天側は、季節により寒く感じると思います。
内湯
高原の中の小さなほったて小屋、そんなイメージ。大人6人くらいで、いっぱいになる広さ。温度は体感42℃くらい。
露天
2段の露天。上段に木造りのあつ湯とぬる湯。下段には岩露天。広さは、あっちの湯の約半分。でも十分な広さです。
◇上段露天
上段ぬる湯は体感38℃くらい。季節により、想像以上にぬるく感じることも。
上段あつ湯は体感40℃くらい。熱すぎずぬるすぎずのよい湯加減。
◇下段露天
水深が浅いぬる湯です。ところどころ座石があります。
座ると少しお腹が出ます。長く座っていると季節により寒く感じるかもしれません。
草や小さな虫の死骸などが浮いていることもあります。気になる方は上段へ。
赤富士
こっちの湯から見える富士山は、真正面から少し左です。下の写真のイメージ。実際はもう少し眼下に甲府盆地も見えます。
太陽は、右手後方に沈んでいきます。富士山に雪があると、雪が夕陽でオレンジ色に染まる時があります。
赤富士という言葉は、晩夏から初秋の早朝に、朝陽で富士山が赤く染まった様を表現している言葉のようです。
それほどではないですが、夕陽に染まる雪化粧の富士山も素敵です。
めぐり逢い
この日は下段の岩露天で、偶然、感じのよい方と隣同士になりました。年齢は20代なかばくらい。僕からみるとイイ男。
彼の隣にもう1人。最初は、友達同士2人で来ているのだと思っていました。ですが2人は、左耳にお揃いのピアス。
まさか こっちの湯で、こっちの世界の方とめぐり逢うとは? しかもすぐ隣に。
LGBT人口の割合=3.3%という記事がありました。それを考えると、このめぐり逢わせはすごい確率だと思います。
日と時間がズレてもダメ。もし僕が、あっちの湯に入っていれば、出逢うこともなかったのですから。
彼らとは40分くらい隣同士でしたが、最後の10分は、隣の男性が僕の右斜め正面に座を移しました。
僕にとってはある意味拷問だったのですが、こちらの世界の方とはいえ見てはダメだと思い、富士山ばかり眺めていました。
袖振りあうも多生の縁
彼らとのめぐり逢いは、僅かな時間ではあったものの何かの縁。僕にとっては、意味のあるものだったと思います。
少なくともその記憶は僕のなかに一生残るものだし、人それぞれの人生の選択と、幸せの形があるんだと思いました。
そして僕自身、他人の幸せを願えるほどの余裕もないし、できた人間でもないのですが、何となく彼らには
ずっと仲良くお幸せに
その時はそう思いました
たとえ袖が触れあう程度の出逢いであったとしても、過去幾世からの縁によるもの。
前世で何度も会ってきた縁のある相手だからこそ、再び出逢うことができた。
袖振りあうも多生の縁
少し神がかり的な言い伝えですが、自分にとって良い出会いの時は、そうであってほしいと思います。
それにしてもゲイカップル、好きな人と2人で温泉旅行? 富士山に代わり私がマグマ吹き上げそうでした。
ひょっとすると今までも気付いて無いだけで、多くのゲイの方とめぐり逢っているのかもしれませんし
これから縁あって、めぐり逢える人もいるのかもしれませんね。
恋五郎(こごろう)
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